敗残兵の白骨化

修行僧の振りをして錫杖を手に持って、編み笠を被りながら敗走する。枯れ草色の僧衣で迷彩した身体には、崩れていった数多の希望がのしかかる。遠雷のように、俺の脳髄に響いてきて、それは呪詛を呟き続ける。果てしなく上昇できるような揚力は妄想でしかない。現実の俺の身体は下方に転落する重力だ。ほぼ焼け野原となった無人の村にたどり着き、朽ち果てた厩舎の中に寝転がる。狂気が俺を生かす飼い葉だ。鉄火場で人生のすべてを投資した男には、弾詰まりの拳銃しかない。どこにも放つことのない、そういう煩悩の残滓が俺を苦しめるのだ。夜風にあたろうと表に出て、瓦葺きの屋根を見やる。この山岳地帯はあまりにも寂れていて、敵影も見当たらない。目を爛々と光らせた思想犯として、失意を脇侍に従えながら、山の稜線を見やる。カンテラの明かりを頼りに、凶兆の匂いがする方に歩き出すのである。峡谷の深みに嵌ることで新しい世界に出会えるという迷妄を信じながら、ひたすら煉獄の最深層を目指すのだ。小さな岩も持ち上げられない四肢だからこそ、貧弱な膂力をもって、夜気に震えつつ、世界の反転を試みるのだ。