怒りを蒸し返しながら

馬齢を重ねて蓄積したのは屈辱の記憶だけ。楽しい想い出など、これっぽっちもない。どこまで深く手繰っても、悦楽の記憶はない。浮腫んだ身体に怒りだけを抱え、行き場もないので立ち往生するしかない。馳せ参じる目的地も無く、帰巣本能に駆られて辿り着ける田舎もなく、都会の片隅に縛り付けられる。必要なのは洪水である。大災厄としての無限の鉄砲水。綺麗な大地が後に残ればいい。過去のない人々がそこには集まり、俺もその一人になるのだ。